個人事業主の記帳について

    個人事業主の方は日々の取引について記帳をする必要があります。帳簿の作成は青色申告白色申告に関わらず必要です。ただし、白色申告や青色申告で10万円控除を受けられる方は売上などの収入と仕入及び必要経費の記帳で必要な帳簿がほぼ出来ますが、青色申告で55万円控除(e-Tax又は電子帳簿保存をおこなう場合は65万円控除)の場合は、貸借対照表の作成も必要となりますのでハードルが高いと感じる方も多いと思います。貸借対照表の作成においては収入と支出の計上だけでなく現金預金や棚卸資産、固定資産、更には買掛金や未払金などの資産と負債の残高も計上する必要があるためです。
    会計ソフトを導入されている場合においても初めての記帳という場合はこれらの残高を合わせるという中で疑問点が多く発生して大変な場合も多いと思われます。そこで、本文では基本的な現金預金の残高を合わせるというところで、よくご質問をいただく内容について、具体例をあげて説明したいと思います。
    なお、本文はわかりやすさを重視してますので厳密な処理とは若干異なる点もある点をご了承ください。
    今回は預金の残高を合わせるための注意点などを中心に解説いたします。預金は残高がはっきりとわかるため帳簿も通帳残高と合わせる必要があります。預金の残高が合っていないとなると、その時点で適正な記帳ができていないということになってしまうためです。以下、具体例をあげて説明します。

1.令和2年から青色申告をおこなう場合で、令和元年末の預金残高がある場合
令和2年から新しく口座を開設して事業を開始される場合は出てこない疑問点ですが、多くの場合それまでにあった預金口座を引き続き利用することも多いと思います。例えば令和元年の年末の残高が15万円あり、その口座を引き続き使用するとします。具体的には以下の仕訳となります。
(借方) 普通預金 150,000円 (貸方) 事業主借 150,000円
この仕訳を令和2年の1月1日でおこないます。これによって期首の残高を合わせることができます。
ここで、事業主借という勘定科目ですが、簡単に言うと事業に関係ない動きによって預金が増えた場合に使用します。

2.個人の生命保険料を支払った場合など事業用の口座からプライベートなものや経費にならないものを支出した場合
ここでは、個人の生命保険料15,000円を預金口座から支払ったとします。
具体的な仕訳は以下のようになります。
(借方) 事業主貸 15,000円 (貸方) 15,000円
事業主貸は経費にならないものの支払いをおこなった場合などに使う勘定科目です。個人の生命保険料は多くの場合生命保険料控除の対象となり経費とならないため、このように仕訳をおこないます。
一方、事業用のお店の火災保険料20,000円を口座から支払ったとします。こちらは、経費となりますので仕訳は以下のようになります。
(借方) 損害保険料 20,000円 (貸方) 普通預金 20,000円
摘要欄へは「店舗用火災保険料 〇〇損保」というように記載します。

3.事業用でない通帳から10万円を預け入れた場合
仕訳は以下のようになります。
(借方) 普通預金 100,000円 (貸方) 事業主借 100,000円
事業に関係ないところからの入金なので事業主借を使います。

4.売上高20万円が事業用でない口座へ入金された場合
仕訳は以下のようになります。
(借方) 事業主貸 200,000円 (貸方) 売上高 200,000円
事業用の口座に入金されていないので事業主貸を使います。
この後にその20万円を事業用の口座へ入金したとします。仕訳は以下のようになります。
(借方) 普通預金 200,000円 (貸方) 事業主借 200,000円
事業主借と事業主貸のどちらになるかについて迷われることもあると思いますが、とりあえず借方に出てくる場合は事業主貸、借方に出てくる場合は事業主借というくらいで大丈夫です。これらは厳密には意味がありますが、損益には影響しませんし、決算が終われば相殺されて繰り越されますのであまり深く考えなくてよいと思います。

5.電気代10,000円が口座引き落としとなったが事業割合は50%という場合
仕訳は以下のようになります。
(借方) 水道光熱費 5,000円 (貸方) 普通預金10,000円
(借方) 事業主貸 5,000円
10,000円のうち事業に関係するのは50%分だけなのでその分は水道光熱費とし、それ以外は事業主貸とします。
この場合は借方が二段になりますので、会計ソフトでは行の追加や振替伝票を使うなどで対応していただければと思います。

6.クレジットカード利用料35,000円が引き落とされ、その内容は通信費15,000円、プライベートなもの10,000円、健康保険料10,000円だったとします。
(借方) 通信費 15,000円 (貸方) 普通預金 35,000円
(借方) 事業主貸 10,000 円
(借方) 事業主貸 10,000円 健康保険料
プライベートなものは事業主貸となります。また、健康保険料も所得控除の対象であり必要経費ではないので事業主貸とします。

7.勘定科目のわからないものが発生した場合
    仕訳入力をされていてどの勘定科目を使えばよいのかわからないケースはよくあるかと思います。このような場合には取引の内容でインターネットで検索されるのが一番早いかと思います。また、書籍でも勘定科目についてのものもありますので、それらを見て参考になされるのもよいかと思います。
    注意点としては雑費をあまり多用しないということです。雑費はどの科目にも該当しないものの場合に使用する勘定科目ですので、本来あまり多額にはならないかと思われます。雑費の金額があまりにも多いとプライベートなものを入れているのではないかと見られてしまう可能性があります。決算書の用紙に印刷されている勘定科目に適切なものがない場合は、別途勘定科目を設定して仕訳をされるとよいでしょう。決算書の用紙にはいくつか空欄があります。

以上、いくつか具体例も用いて説明してまいりましたが、参考にしていただいて預金の動きと預金勘定の動きを一致させて残高を合わせるようにしていただければと思います。現金出納帳についても預金についての仕訳を参考にしていただければと思います。

 

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