今までは期中の取引についてよく出てくるであろう項目の仕訳の説明をしてきました。

今回からは何回かに分けて決算の時におこなう仕訳の説明をしていきたいと思います。

決算編の1回目は期末棚卸の処理です。

1.期末棚卸が必要な理由

スーパーなどで「本日は棚卸のため営業時間は○時からになります。」といった張り紙などを見たことがある方もいらっしゃるかと思います。これは、期末に商品や製品や材料などがどれだけ残っているのかを確かめる作業です。今までの説明で材料等を仕入れた時には仕入の仕訳をおこなうことはおわかりかと思います。ところがこれだけだと当期の営業成績を正確にあらわすことはできないのです。例えば当期に商品を100個仕入れて、そのうち80個が売れたとします。仕入の単価を100円とすると仕入の金額は10,000円となります。売上の単価は120円とします。すると売上高は9,600円となります。ここで計上されている売上と仕入を確認してみます。売上高は9,600円で仕入は10,000円です。9,600円-10,000円=▲400円で赤字となっています。100円で仕入れたものを120円で売ったのに赤字というのはおかしいですね。なぜこうなってしまったのでしょうか?それは、売上に対応した部分以外も仕入として費用に計上してしまっているからです。100個仕入れましたが、売れたのは80個なので、20個はまだ残っています。この20個が期末棚卸高というものです。期末の棚卸品の評価については一定のルールがありますが、今回は買った時の金額で評価するものとします。100円で仕入れたものが20個残っているので、期末棚卸高は2,000円となります。これは、売上に対応するものではないので、決算の仕訳では仕入の金額からマイナスします。その結果仕入の金額は10,000円-2,000円で8,000円となります。

ここで損益を見ますと、売上9,600円-仕入8,000円=1,600円となり、利益が出ていますね。また、このケースでは当期に仕入れたものだけで計算していますが、たいていの場合は前期から残っているものもあるかと思います。これを期首棚卸高と言います。仮に期首棚卸高が20個で合計して1,800円あったとします。そうすると期末の数は20個+100個-80個=40個となり、期末棚卸高は100円×40個=4,000円となります。売上に対応する仕入の金額は1,800円+10,000円-4,000円=7,800円となります。

2.実際の仕訳はどうなるか?

決算での仕訳は前期からの繰越高を仕入に加える仕訳と期末の残高を仕入からマイナスする仕訳の2つとなります。

前期からの繰越高を仕入に加える仕訳

(借方)仕入 1,800円 / (貸方)商品1,800円

当期の期末残高を仕入からマイナスする仕訳

(借方)商品4,000円 / (貸方)仕入 4,000円

当期の費用である仕入は7,800円となり、財産として残っている商品は4,000円となります。

この時点での貸借対照表と損益計算書を見てみますと以下のようになっています。

<貸借対照表>    <損益計算書>

商品 4,000円    仕入 7,800円

これを見ると期末に商品が4,000円残っていることはわかりますが、問題は仕入です。これだけだと前期に商品がいくらあったのか?とか結局当期はいくら仕入れたのかがよくわかりません。そこで、実務上損益計算書は以下のような形式になっています。

<損益計算書>

前期商品棚卸高 1,800円

当期仕入高   10,000円

計     11,800円

期末商品棚卸高 4,000円

当期売上原価  7,800円

 

以上、今回は決算シリーズ1回目として期末棚卸をすることによって、当期の売上に対応する仕入額を計算するということと、その仕訳を説明しました。簿記検定のテキストによりますと、二分法や三分法といった方法で説明されていますが、いまいちピンとこなかった方もいらっしゃるかもしれません。しかし、今回の内容を理解していただければ理解が深まるのではないかと思います。

では、今回はこの辺で終わりにします。

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