農業を営まれている方の消費税の留意点その2

  • 前回に続き農業を営まれている方特有な留意点をご説明します。今回は簡易課税を選択されている方についてのお話です。

1.簡易課税制度とは
消費税の納税額の計算においては原則課税方式と簡易課税方式とがあります。原則課税方式は売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引いて計算する方法です。
例えば消費税の課税売上が税込み年間2,200万円(うち消費税200万円)で、仕入れや経費が1,540万円(うち消費税140万円)だったとします。この場合に納めるべき消費税は200万円-140万円=60万円となります。
※ 実際の申告書作成にあたっては国税分と地方税分を分けて計算しますが、わかりやすいようにしております。
原則課税のデメリットは仕入れや経費を消費税のかかるものとかからないものに一つ一つ区分する必要があり、手間がかかる点です。
一方簡易課税方式は売上にかかる消費税だけが分かれば、業種ごとに定められた割合をその消費税の額にかけた金額を差し引くことができるというものです。例えば飲食店を経営されている場合は第4種事業として60%が控除割合となります。
先程の計算例に当てはめると200万円×60%=120万円となり、納付すべき税額は200万円-120万円=80万円となります。仕入れや経費について消費税の課税かどうか判断する必要はなく原則課税に比べて手間が大きく減ります。
デメリットは手間がかからない反面納税額が増えてしまう可能性があるということです。上記の例では原則課税なら納付額は60万円なのに簡易課税なら80万円となってしまうことがわかります。ただし、簡易課税の方が結果有利になったということもあるので一概に言えません。
簡易課税のデメリットの最大のものは設備投資を行った場合です。上記の例で店舗の改装工事に1,100万円(うち消費税100万円)かかったとします。原則課税では200万円-(140万円+改装工事にかかる消費税100万円)=▲40万円で40万円の還付となります。しかし、簡易課税では売上にかかる消費税しか考慮しないので納付額80万円のままです。
また、簡易課税を選択すると原則2年間は原則課税に戻れません。このような縛りは原則課税にもありますので、どちらにするのかは単なる手間だけではなく、将来の設備投資計画なども考えて慎重に選択する必要があります。

2.農家の方の場合の留意点
農家の方が簡易課税制度を適用する場合には、軽減税率導入前までは第3種事業で控除割合は70%でしたが、10月以降は第2種事業として80%の控除となります。そのため、9月までの売上と10月以降の売上とで正確に分ける必要があります。

3.改正の意図は?
ここからは研修会の講師の先生のお話をもとに私の考えたものですが、農家の方は売上は食品であれば8%の軽減税率が適用されます、しかし、苗代、肥料代、水道光熱費などほとんどの仕入れや経費は10%が適用されると思われます。
例えば8%対応の売上が税込2,160万円だったとします。改正がなかったとすると控除できる金額は160万円×70%=112万円です。一方仕入れや経費は8%から10%に上昇しているため消費税の負担は1.25倍になってます。預かる消費税がそのままなのに支払う消費税は1.25倍ならば、先程の計算で出た112万円も1.25倍にして欲しいところです。
そこで、10月以降の食料品の販売については第2種に該当ということで80%の控除割合が適用されることとなりました。80%は70%の1.14倍ですので、1.25倍には届きませんが負担の緩和になるかと思います。第1種の90%で計算してみますと1.28倍で1.25倍を超えているので、第2種の80%になったのだろうと思われます。

農家の方にはいくつか留意点がございますので、確定申告の時にご注意していただけるばと思います。

松山市の税理士 山中敏正税理士事務所

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