相続税対策における生前贈与の活用法その1

     相続税の対策として生前贈与も有効な方法の一つです。しかし、過度な生前贈与を阻止するために贈与税があるため、当然に贈与税について考える必要があります。また、贈与税の問題はクリアしても新たな問題が発生する可能性もあります。今回は贈与税の特例を区分してご説明したいと思います。
1.贈与をすることによって財産を減らさずに相続人へ渡す方法
     まずはこの方法が使えないかということを検討する必要があるかと思います。後ほどご説明する結婚・子育て資金の贈与の特例や教育資金の贈与の特例は財産が減ってしまう相続税対策です。順番にご説明します。
(1) 暦年課税方式による財産の移転
     贈与税は相続時精算課税制度を選択しなければ1年間あたり110万円までの贈与は課税されないことになっています。例えば相続人に年間110万円の預貯金を贈与10年間行ったとします。贈与税は課税されないため財産を相続人へ渡すことができます。最もポピュラーな方法です。ただし、年間110万円までなので急遽相続税対策を行うのには向いていません。あくまで長期計画で行う必要があります。また、相続開始時には相続開始前3年間の贈与は相続により財産を取得した人には出し戻す必要があります。この方法を効果的に使うには早めの相続税対策の計画を立てる必要があります。また、贈与の相手が年少の方の場合には別の口座に振り込んでいるだけで実質的に贈与になっていないという指摘を受けることもあります。贈与をしたとは言っても通帳やキャッシュカードは贈与者がずっと保管しているという場合は贈与と認められないため、注意が必要です。
     ここで相手が何歳以上であれば贈与してもらったというのが分かるかということが論点となります。過去の裁判例では6歳くらいが一番若かったと記憶しています。しかし、個人的には中学生以上くらい、出来れば義務教育が終わって働くことができるくらいの年齢が安全ではないかと考えます。
(2) 住宅取得資金の贈与の非課税制度を使う方法
    この方法は贈与を受けた金銭で住宅用の家屋やその敷地を購入した場合に使える制度です。暦年課税方式より多くの金額を一度に移転することができます。金銭が土地家屋に変わってしまいますが、財産を減らさずに移転することができます。
(3) 贈与税の配偶者控除を使った財産の移転
 婚姻期間が20年以上の場合に居住用財産等を無税で贈与できる制度です。
2.注意点
    相続税対策のみを考えて贈与を行ったら、自分の老後の資金が足りなくなったということもあります。老後にどれくらいの資金が必要なのかを考えて利用することが大切です。この続きは次回行います。

 

松山市の税理士 山中敏正税理士事務所

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