相続税の課税対象となるかどうかの判定の注意点

     基礎控除の大幅な引き下げにより相続税の課税対象となる方の割合がほぼ倍になりました。相続税がかかるかどうかのご相談をよく受けますが、その判断の時の注意点をご説明したいと思います。
1.相続財産の把握
    まずは相続開始時の財産について把握する必要があります。この場合に簡単な表を作成されて、財産名と評価額を記入していくことが良いでしょう。相続財産としてよく出てくるものとして、現金や預貯金、土地、家屋、株式、生命保険金などがあります。
(1) 現金、預貯金については相続開始時の残高とその時に解約したとした場合の経過利息の合計となります。注意する点としては相続開始時という点です。残高証明書を金融機関などで発行してもらう際に依頼時ではなくて、相続開始時のものを依頼しましょう。
(2) 土地については、相続税の財産評価基本通達により評価を行いますが、最初の段階では固定資産税評価額の1.14倍したもので良いです。
(3) 家屋については、固定資産税評価額となります。
※ 土地・家屋ともに貸家の場合は相続開始時の現業により一定の減額がありますが、判断や計算がやや複雑な点もあるため、最初の段階では考慮しなくて良いでしょう。
(4) 株式については、上場株式など相場のあるものについては相続開始時の取引相場を記入されると良いでしょう。非上場株式については評価が複雑なため、この段階ではとりあえず空欄にしておくしかないかと思います。
(5) 生命保険金については、受取額となります。なお、生命保険金については法定相続人の数×500万円までは非課税となりますので、この分は考慮しておいて良いでしょう。
2.債務・葬式費用
相続税の計算においては相続開始時に存在していた借入金、通夜や葬式の費用は控除することができますので、これらの金額のわかるものから金額を記入しておくと良いでしょう。
この段階で基礎控除を大幅に下回っていれば、相続税  の課税対象となる可能性は低いと思われますが、以下のものがある場合には注意が必要です。
3.相続時精算課税制度を利用していた場合
     この制度は1人あたり2,500万円まで、相続の時まで課税を繰り延べる制度であり、税額が免除されたわけではないので、必ず足し戻すことが必要です。例えば上記1と2で計算した結果課税対象財産の金額が3,000万円だ基礎控除が4,200万円だったとします。この場合に相続時精算課税で生前に2,500万円贈与をしていると、課税対象財産は3,000万円+2,500万円=5,500万円となり、基礎控除を上回るため相続税の申告が必要となります。
4.相続人への相続開始時前3年以内の贈与がある場合
     この金額も足し戻す必要があります。気をつけなければならないのは、年間110万円以下の贈与のものであっても足し戻すことが必要な点です。
5.結婚子育て資金や教育資金の贈与で使われていない残額のうち一定のもの
    これらの金額も足し戻すことが必要です。教育資金の贈与の残高は受像者が23歳未満であったり在学中で一定の場合は足し戻しが不要となることもあります。
6.小規模宅地の減額や配偶者の税額軽減を受ける場合
    これらの制度は申告をすることによって適用を受けることができるものです。そのため、これらの制度を利用して税額が0円になる場合にも申告は必要となります。
7.相続開始直後に葬儀費用などにあてるために引き出した金額
    例えば12月28日の午前中にお亡くなりになり、その日の午後一番に葬儀代として100万円を引き出したとします。金融機関などで残高証明を発行してもらうと引き出した後の金額のものになるかと思います。この場合に預貯金は引き出し後で評価し、そこから葬式費用を控除すると二重控除となってしまいます。そのため、引き出した金額も足し戻す必要があります。相続税申告にあたってのチェックシートにも明記されています。
8.まとめ
    相続開始時の財産債務の状況では基礎控除以下と思っていても足し戻すことにより課税対象となることもあるので、ご心配なようでしたら税理士に概算計算をしてもらうと良いと思います。

松山市の税理士 山中敏正税理士事務所

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