相続時精算課税の注意点

相続税精算課税制度は平成15年に施行されてから多くの方が利用されてきたことと思います。現在では、贈与税の非課税ではなくて相続の時までの繰り延べと理解されている方が多くなっていますが、設立当初は無税で財産を贈与できるということで、あまり相続の時まで考えていなかったという方も多いのではないかと思われます。相続税の申告にあたって過去に相続時精算課税を適用したことをすっかり忘れてしまっていると財産の漏れとなります。以下、注意点をご説明したいと思います。

 

1.相続財産の洗い出しの時に忘れてしまった。

総則税の基礎控除が下がったため、相続税の課税対象となる方が増えました。基礎控除の金額の計算はよく知られるようになりましたが、相続時の財産のみの合計が基礎控除以下だからといって安心はできません。

 相続人の方が3年以内に被相続人から贈与を受けた場合は足し戻しが必要なことはご存知の方も多いのですが、相続時精算課税の適用を受けたことを忘れてしまっていたという方のお話をちらほらと聞きます。

 最初の計算ではぎりぎりで基礎控除を下回っていても、相続時精算課税制度を利用して贈与した財産を足し戻すと完全に基礎控除を超えてしまったということがあります。

 税務署ではこの足し戻しは簡単に把握できるため、必ず確認して忘れないようにする必要があります。

 

2.相続時精算課税を目いっぱい使った後に贈与はないか?

 相続税精算課税を利用すれば2,500万円までは贈与税は課税されませんが、一方で年間110万円までの贈与であれば贈与税が課税されない暦年課税にもどることはできなくなります。つまり、2,500万円目いっぱい使った場合は、その後は少ない金額の贈与であっても20%の税率で贈与税がかかります。この贈与税は相続の時に精算されます。

 相続時精算課税を選択して2,500万円分枠を使い切ってしまっているのに、年間110万円までの贈与は贈与税がかからないと誤解されている方がいらっしゃるというお話を聞きました。

 また、相続税精算課税制度を選択した以上は2,500万円に達するまでは贈与税は課税されませんが、申告は必要ということもお忘れになっている方が多いと聞きます。

 是非とも注意したいところです。

 

3.暦年課税でも相続時精算課税でも相続開始前の3年以内の贈与の足し戻しには注意!

 相続開始前3年以内の贈与は例え年間110万円以下のものであっても足し戻しが必要となるので注意か必要です。

 

4.まとめ

 相続が開始した時にその時点の財産だけで判定して安心してはいけないということがお分かりいただければと思います。財産の評価の方法や名義預金に該当するかどうかについては考慮の余地がありますが、精算課税分の足し戻し忘れは争う余地なく申告漏れとなります。

 相続が開始した方、将来の相続税がご心配の方は有料とはなりますが、ご相談いただければと思います。皆様のご安心のお役に立てればと思います。

 

松山市の税理士 山中敏正税理士事務所

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