相続対策はパランスが重要

今回は相続税対策についてのお話です。
相続税の対策方法はいろいろとありますが、賃貸不動産を購入することによる節税について説明します。
例をあげて考えてみます。
Aさんの財産は預貯金が2億円だったとします。この場合に相続税の計算の基となる財産の価額は2億円です。
ここでこの2憶円で賃貸マンションを建築することにしました。土地が1億円で建物が1憶円だったとします。
幸い全室とも借り手がいて空室はないものとします。
まず、土地についてです。相続税において土地の評価はその土地の所在地によって路線価を用いる方法と固定資産税評価額を用いる方法とに区分されますが、この評価額は通常の取引価額とされる地価公示価額の約8割となるようになっています。土地の形状などにより必ず一致とは言えませんが大体の目安となります。
このケースでは1憶円で購入した土地の評価額は1憶円×0.88,000万円となり、預貯金のままのときより2,000万円財産の価額を減らす効果があります。さらに、マンションとして貸している場合には「貸家建付地」という土地に該当してそこからさらに2割ほど減額されます。この減額割合はマンションの所在地によっていくらか異なりますが、大体2割です。これを考慮すると8,000万円×(1-0.2)=6,400万円となり、最初の預貯金1億円と比べると3,600万円も財産の評価額を減らすことができることとなります。ただし、空室がある場合には空室部分についてはこの2割の減額は適用されません。
次に建物部分ですが、建物の評価は固定資産税評価額となります。このうち空室でない部分は貸家として3割の減額が適用されます。固定資産税の評価額は市町村によって若干異なりますが、建築費用の5070%くらいになるようです。ここでは建物の購入価格を建築費用として、固定資産税の評価額はその70%とします。
建物の固定資産税評価額は1憶円×70%=7,000万円となり、これがイコール相続税評価額となります。
さらに空室がない場合は貸家として評価されるため3割の減額が適用となります。
最終的には建物部分の相続税評価額は7,000万円×(1-0.3)=4,900万円となり、預貯金のままのときより5,100万円減ることとなります。
ここで、いったんまとめてみますと預貯金のままでは2憶円の評価額だったのが、そのお金でマンションを建築すると11,300万円となり、半分近くまで財産の評価額を下げることができるわけです。
相続税の対策として不動産を購入することは大きな効果があります。
この方法で相続税が大きく減額されてめでたしとなればいいのですが、このケースでは少し困ることがあります。
追加の条件で相続人がAさんの配偶者とお子さん2人だったとします。基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となり、相続財産の価額は基礎控除を大きく上回っているために相続税がかかることとなります。
ところが預貯金をすべて不動産にしてしまったために納税資金がなくなってしまったのです。
相続税を減らすことだけを考えていたのではいけにというわけです。
このケースでは、
1.節税効果は下がりますが預貯金のうちいくらかを納税資金として残しておく
2.不動産購入がAさんが元気なうちになされたのであれば、家賃収入を貯めておく
3.納税資金に備えて生命保険に加入しておく
などが考えられます。
不動産をご自身の資金で購入されたのであれば納税資金対策も考えやすいのですが、バブルの時代には金融機関等からの借入でおこなわれたケースが多くありました。不動産にすることで相続税の評価額が下がるだけでなく、借金は相続税の計算上差し引くことができるため、相続税が0になるケースもありました。
しかし、バブルが崩壊すると不動産の価値は大幅に下落したうえに多額の借金が残ってしまったという方が多くいらっしゃいました。確かに相続税は節税になりましたが、不動産を売却しても返済できないほどの借金を背負ってしまうこととなったのです。
現在はバブルの時とは状況が大きく変わりましたが、相続税対策にあたっては計画を立ててバランスを考えながら慎重におこなう必要があると言えるでしょう。

 

 

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