個人事業主の記帳について その2

今回も前回について記帳の仕方について説明します。
今回は少し面倒なクレジットカードを利用した場合の仕訳です。支払いをするのにクレジットカードは非常に便利ですが利用のタイミングと口座から引き落とされるタイミングが異なるため、仕訳は少し面倒になります。
以下、例をあげて説明します。

1.原則的な方法
11月のクレジットカードの利用は以下の通りです。
11月5日 消耗品購入 5,000円
11月10日 仕事用の書籍購入 5,000円
11月20日 プライベートな買い物 10,000円
11月分のクレジットカードの明細は11月25日に届き、引き落としは12月10日だったとします。
次に仕訳を説明します。
クレジットカードを利用した時は、支払いはまだなので貸方は未払金となります。それぞれ以下のようになります。
11月5日 (借方) 消耗品費 5,000円 (貸方) 未払金 5,000円
11月10日 (借方) 新聞図書費 5,000円 (貸方) 未払金 5,000円
11月20日 (借方) 事業主貸 10,000円 (貸方) 未払金 10,000円
12月10日に普通預金の口座から引き落とされた時は以下のようになります。
12月10日 (借方) 未払金20,000円 (貸方) 普通預金 20,000円
以上です。

2.簡便な方法
記帳を行う場合は現金や預金を支払ったタイミングではなく購入したタイミングで仕訳をおこなう必要があります。これを発生主義と言います。上記1では、発生主義によっています。
ところが、毎月クレジットカードを利用したタイミングで未払金を計上して、翌月に未払金をマイナスする方法は手間がかかります。特にクレジットカードの利用回数の多い場合は大変かと思います。
そこで、期中は口座から引き落とされたタイミングで仕訳をして、期末にクレジットカードで購入したものの、まだ預金から引き落とされていないものを未払金に計上する方法があります。これを期中現金期末発生主義と言います。毎月の仕訳は発生主義ではないのですが、1年分の取引を記載した決算書では発生主義と結果は同じとなるので、大きな問題はないと思われます。
仕訳は以下のようになります。
12月10日
(借方) 消耗品費 5,000円 (貸方) 普通預金 20,000円
(借方) 新聞図書費 5,000円
(借方) 事業主貸 10,000円
次に12月に購入、翌年1月に口座から引き落とされるものは未払金で記帳計上します。こるが期末発生主義です。
12月15日に交際費として8,000円クレジットカードで支払いをした。
12月20日に広告宣伝費30,000円をクレジットカードで支払った。
これらの利用額の引き落としは翌年1月10日である。
具体的な仕訳
12月15日(借方) 接待交際費 8,000円 (貸方) 未払金 8,000円
12月20日 (借方) 広告宣伝費 30,000円 (貸方) 未払金 30,000円
翌年1月10日 (借方) 未払金 38,000円 (貸方) 普通預金 38,000 円
以上です。
期中現金期末発生主義は仕分けの手間が減りますので、毎月発生主義という方はとりあえず取り入れてみるのもよいかと思います。その後仕訳に慣れてきて月ごとの損益分析などをおこなう場合には期中も発生主義とした方がより正確な分析ができます。

3.まとめ
前回から青色申告をおこなう場合の記帳の方法について説明してきました。前回であれば預金の残高を合わせること、今回であれば未払金の計上というのが55万円(e-Tax又は電子帳簿保存の場合は65万円)控除を受けるために必要なこととなります。
55万円控除は税法上とても有利なのですが、1年目からではハードルが高いと感じる方もいらっしゃるかと思います。売上や仕入、必要経費の仕訳もまだ慣れていないという場合は混乱してしまうかもしれません。そこで、最初は収入と仕入れや経費をしっかり記帳して10万円控除を受けられる要件を満たすことを目標にして、次に現金や預金、その他資産負債の残高を合わせて貸借対照表の作成ができる55万円控除へとステップアップするというのもよいかと思います。
貸借対照表を作れないから青色申告を諦めるというのではなく、とりあえずは簡易な帳簿で適用を受けられる10万円控除を目指すということです。事業を始められた当初から55万円控除を受ける必要があるくらい利益が出ている場合は、頑張って55万円控除を受けられるようにすると有利ですが、まだ、そこまで利益が出ていないという場合はとりあえず10万円控除からというのはどうでしょうか?
※補足
前回勘定科目がわからない場合にはインターネット等で調べるとよい旨を述べました。勘定科目だけでなく、仕訳がわからない場合に仕訳ごと調べることもできますので、一度検索してみることをオススメします。

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