事業承継税制について 第二回

前回の続きです。松山市の税理士 山中敏正税理士事務所

 

3.事業承継税制とは?

 

川*^∇^) <午後は事業承継税制について説明します。眠くなる時間ですががんばってください。

 

州*´・ v ・)州*‘ -‘リ <はーい

 

 

川*^∇^) <後継ぎ問題と税金がどういう関係なのか?疑問を持たれる方が非常に多いのではないでしょうか?ここではわかりやすくするためにいったん会社から離れて農家の方の後継ぎ問題に置き換えてみます。サザエさんの登場人物に例えてみましょう。磯野波平さんが農業をされていたとします。年齢的にきつくなってきたのでおっちょこちょいだけどサザエさんに後を継いでもらおうと考えました。

 

州*‘ -‘リ <大丈夫かな?

 

川*^∇^) <あるとき波平さんはぎっくり腰で寝込んでしまいました。最近物忘れも増えたようだし、田んぼを後継者のサザエさんに贈与して任せることとしました。

 

州*‘ -‘リ <贈与税がかかっちゃうよ。贈与税は税率が高いから波平さんが亡くなってから相続で引き継いだほうがお得なのにね。

 

州*´・ v ・)<でも相続だと遺言書があってももめるかもしれませんよ。カツオ君が自分にも権利があると主張するかも

 

州*‘ -‘リ <カツオ君はそんな悪い子じゃないよ。ワカメちゃんも納得してくれるよ。

 

川*^∇^) <はいはいそれまで。ではここで波平さんの農業の事業承継の邪魔をしているのは何かわかりますね。

 

州*‘ -‘リ <カツオ君です。

 

川*^∇^) <さっきはカツオ君の味方だったのに。

 

州*´・ v ・)<生前にサザエさんに贈与できていればよかったのに贈与税が高いからどうしようかとなったんですよね。じゃあ贈与税かな?

 

川*^∇^) <正解です。贈与税がなければ又は相続税並みの税率であったらサザエさんに田んぼを譲ることができたのです。ぎっくり腰の後は無理はできないかもしれませんが、サザエさんが主となって農業をし、波平さんはそのよき相談役として円滑な事業承継ができたことでしょう。

 

州*‘ -‘リ <そういえばJAのイメージキャラクターはサザエさんでしたね。

 

川*^∇^) <本当ですね。話を戻します。サザエさんは贈与税を納めなくてはなりません。その分の預貯金があればよいのですが、無ければ田んぼの一部を売却しなければならないかもしれません。

 

州*´・ v ・)<サザエさんは日本の農業を守るために立ち上がったのにかわいそうです。

 

川*^∇^) <実は田畑などについてはかなり前から納税猶予の制度があります。納税猶予というのは税金がかからないということではないのですが、贈与を受けた後にきちんと農業を続けていることなど一定の条件を満たしてくれている間は課税を先送りにしてくれるというものです。

 

州*‘ -‘リ <でもいずれ納めなければならないんでしょ

 

川*^∇^) <贈与の場合は贈与をした波平さんが亡くなった時に免除してくれます。つまり税金なしにしてくれるのです。ただし、その時までに農業を続けていなければなりません。

 

州*´・ v ・)<贈与税は免除してくれたとしても相続税が課税されるのではないですか?

 

川*^∇^) <農地については相続税にも納税猶予があります。農業を続けていることその他要件を満たしている間は猶予してくれます。そして20年経過すれば免除してくれます。

 

州*‘ -‘リ <ずっと農業を頑張っていれば贈与税も相続税も農地部分は課税されないということですね。

 

川*^∇^) <そうです。ただしあくまでも農地に対応する部分ですから農地以外の財産、例えば自宅や預貯金などがあればその部分については納税猶予は受けられません。今盛んに言われている事業承継税制は田んぼなどの農地を会社の株式にも適用するというものです。ところが平成30年の改正まではあまり使われていなかったのです。これは休憩後にしますね。ここで15分休憩です。

 

4.当初の事業承継税制

 

川*^∇^) <事業承継税制自体は平成21年に創設されていました。ここで、休憩前までのところのおさらいをしておきましょう。先に農家の方を例に挙げました。波平さんが後継ぎのサザエさんに田んぼを贈与しやすいように、また波平さんが亡くなってもすぐには相続税がかからないように猶予してくれる制度でした。農家の方は田んぼや畑を後継者に渡します。これが株式会社などの会社であればどうなりますか?

 

州*‘ -‘リ <代表なんとかを後継ぎさんに変更して登記すればいいんじゃないですか?

 

川*^∇^) <確かに登記上はそうでしょう。では会社はだれのものですか?

 

州*´・ v ・)<会社は株主のものと聞いたことがあります。株を多く持っていれば経営者を交代させることができるとか・・・

 

川*^∇^) <そうです。いくら登記上代表取締役になったとしても、自分の会社の株を持っていないのならば大株主の言いなりです。後継者は代表となるだけでなく大株主にもならないと本当の意味での後継者にはなれないのです。

 

州*‘ -‘リ <よくわかりません。トヨタとかパナソニックに何十%も持っている大株主がいるんですか?

 

川*^∇^) <トヨタやパナソニックのような上場会社ではありえないでしょう。今回の対象は中小企業です。中小企業では社長さんが株式のほとんどを持っていることが多いです。例えば磯野家に例えると波平さんが70%、奥さんのフネさんが30%といった感じです。この株式を後継ぎのサザエさんに譲り渡すことが事業承継なんです。

 

州*´・ v ・)<なるほど!サザエさんを代表取締役にしても波平さんが70%持ったままならサザエさんは言いなりにならないといけないですね。

 

川*^∇^) <さらに相続が起こると面倒です。フネさんは「後継ぎはサザエだから私は株はいりません。」ワカメちゃんは「私はよくわからないからいらない。」と株については放棄したとします。しかしサザエさんとカツオ君は兄弟姉妹なので法定相続分は同じです。その結果株主はサザエさん35%、カツオ君35%、フネさん30%となります。カツオ君がサザエさんに何かと反対すれば前に進めないこととなります。

 

州*‘ -‘リ <なんとなくわかりました。後継ぎのサザエさんに株を集中させないと本当の事業承継にならないということですね。

 

 

川*^∇^) <そうです。事業承継を円滑に行えるように平成21年に事業承継税制が創設されました。しかし、あまり使われませんでした。

 

州*´・ v ・)<なぜ使われなかったのですか?

 

川*^∇^) <農地の場合は農地に対応する贈与税や相続税は全額納税猶予の対象となります。しかし会社版の事業承継税制では贈与した株式の3分の2に対応する部分の税額の80%が対象と制限があったのです。

 

州*‘ -‘リ <いったいいくらなのか、暗算が苦手なので分かりません。

 

川*^∇^) <3分の2×80%は約53%です。つまり半分くらいしか猶予してくれないのです。農地の100%と比べるとダメダメです。

 

州*´・ v ・)<47%分の税金を納めないといけないですね。手元に資金のある限られた人しか利用できないですね。

 

川*^∇^) <利用されなかった大きな理由がもう一つありました。農家の方の場合は農業を続けていれば原則大丈夫でしたが、会社版では雇用割合という条件があったのです。

 

州*‘ -‘リ <それは何ですか?

 

川*^∇^) <株式を取得してから5年間は贈与や相続で株を取得したときの従業員数の8割の従業員を常にキープしなさいというものです。1日でも満たさなければ今まで猶予した税金を利息付きで納めなさいというものでした。税務署が毎日見張っているわけではないでしょうが、利用する方にとっては相当なプレッシャーでしょう。

 

州*´・ v ・)<経済状況はめまぐるしく変化していますし、業務の効率化にも逆行してますね。

 

川*^∇^) <国としては雇用の安定を重視したのだと思いますが、経営者にとっては大きなリスクでした。そのため、年間の利用実績が170件くらいだったようです。47都道府県で単純に割り算すると1つの県で3.6くらいです。でも東京や大阪・名古屋などの都会と地方では会社の数が全然違います。県によっては利用実績0というところもあったのではないかと思います。

 

州*‘ -‘リ <使ってもらえない制度を作っても意味がないですね。

 

川*^∇^) <その後要件が少し緩和されました。5年間のうち1日でも80%を切ってはいけないというのが5年間平均で良いとなりました。

 

州*´・ v ・)<なるほど。ある年は75%だったとしても後で増やすことができれば納税猶予が継続できたわけですね。

 

川*^∇^) <この改正で利用実績は2倍くらいになったそうです。

 

州*‘ -‘リ <でも全国の中小企業の数からすればまだまだ少ないですね。

 

川*^∇^) <そこで平成30年に大きく改正されました。ここらでいったん休憩しましょう。

 

5.平成30年改正とは?

 

川*^∇^) <今回の改正で株式に対応する税額の100%が納税猶予の対象となりました。

 

州*´・ v ・)<これは大きいですね。53%から一気に100%ですか。

 

川*^∇^) <次に雇用要件ですが、例えその期の従業員数が80%を下回ったとしても、その理由を書いて、認定経営革新等支援機関の意見を書いてもらったものを提出すれば猶予は継続するというものです。

 

州*‘ -‘リ <理由を書いてなんとか機関の意見も書いてもらって提出でOK牧場なんですね。そのなんとか機関とはどこにあるんですか?

 

川*^∇^) <これは金融機関・商工会議所・商工会などの団体と公認会計士・税理士・中小企業診断士などの有資格者で認定されたものが該当しますので、身近にあります。経営革新等支援機関で検索するとすぐにわかります。

 

州*´・ v ・)<ところで利用実績はどうなりましたか?

 

川*^∇^) <速報値ですが、平成30年度では1,000件を超えるようです。しかし、この制度を利用するのはあらかじめ認定経営革新等支援機関の意見付きの計画書を都道府県に提出しておく必要があります。その期限は令和4年12月末です。内容はあまり難しくありませんし、後継者を変更しても変更の届出を出せばよいです。さらに、これを出していても事業承継税制を使わなくてもいいのです。そのため、とりあえず出すだけ出しておくという企業もあるようです。

 

州*‘ -‘リ <先生!お腹空いたうえに眠くなったのでそろそろお開きにしませんか?

 

川*^∇^) <仕方ないですね。いったんここで終了しましょう。お疲れ様でした。

 

州*´・ v ・)州*‘ -‘リ <お疲れ様でした。

いかがでしたか?適用件数は文章作成時のものですが、改正後は大幅に増えたようです。経営計画書の作成はそれほど細かいところまでは求められていないため、事業承継はまだ先とお考えの方も現状把握という面では役に立つとと思われます。計画の策定についてのご相談もお待ちしております。

松山市の税理士 山中敏正税理士事務所

 

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